2025年1月下旬、中華人民共和国広東省にある「中山国際野球場」を視察しました。
日本(東京)から飛行機で5時間あまり、マカオもしくは広州から車で1時間ほど行った場所に「中山市(Zhongshan)」はあります。
同エリアとの出会いは、弊社代表の加藤が野球日本代表「侍ジャパン」の事業に従事していた2016年12月に、中山市で「BFAU12アジア選手権」が開催されたことがきっかけです。

U12日本代表は同地で初優勝を遂げました。
その際、同地の企業家である馮小龍氏から中山市のベースボールタウン構想を明かされ「日本の野球をリスペクトしているので将来色々と協力をしてほしい」と相談を受けました。


その後、弊社設立後複数回現地視察を行いましたが、コロナ禍で一時関係が途絶えました。
コロナも落ち着いた2024年11月に連絡をいただき、日本でお会いしたのち、今回の視察が実に7年ぶりの訪問となりましたが、プロレベルの試合が開催できる球場が3つ隣接するなど、ハード面の進捗には目を見張るものがありました。



以下、「中山国際野球場」に関する概要と視察レポートとなります。
※資料はPANDA SPORTSより転載
※レポートはできる限り情報を精査して掲載していますが、正確性については保証いたし兼ねますのでご了承ください。
【中山国際ベースボールタウンの成り立ち(歴史的背景)】
広東省・中山市は「孫文」の出身地で有名ですが、野球とも日本とも関係の深い歴史を持ちます。


中 華 野 球 団
それは”中国棒球の父”と呼ばれる梁扶初氏の生まれ故郷であり、梁氏は幼少時に来日し野球に出会い、明治大学でもプレー。大学卒業後は横浜で生活をしながら野球を続け、1930年には自ら創設した中華野球団を横浜市民野球大会で優勝へ導くなどの活躍。
その後、中国へ帰国した梁氏とその息子たちが中心に1941年に「上海PANDAS(熊猫隊)」を創設。
梁氏は1968年に病死しますが、息子の梁友文氏が2000年代に中山市東昇鎮に戻り、子どもたちに野球を教える活動を開始。80歳を超えてもノックバットを持つその情熱に感化された馮小龍氏が活動の支援を開始し、この構想が始まりました。


(2022年97歳で他界)

中山国際ベー スボールタウンの
夢が生まれた
【記念球場と経済環境】
中山国際ベースボールタウン構想がスタートし、2019年にはパンダ記念球場が完成。
同年には第2回BFA女子野球アジアカップが開催。
その後現在までに同規模の球場が2つ隣接する形で追加建設され、現在はプロレベルの試合を隣接する3つの球場で開催することが可能になっています。
2022年にはWBCに出場する中国代表のキャンプ地として使用されたほか、弊社が視察した25年1月には中国女子ソフトボール代表がキャンプを行っていました。



こうして国際ベースボールタウンが完成した中山市は広州・香港・マカオ・深圳に囲まれており、いずれも1時間圏内で足を運べるという「地の利」を持ちます。
このエリアだけで中国国内総生産の10%強を計上し、168兆円というGDP値は113兆円(2024年)の東京都をはるかに上回り、経済圏の人口も6,671万人を数えるというマーケットとしての大きな可能性を感じさせてくれます。

【中山国際ベースボールタウンから眺める中国野球の未来景色】
球場から徒歩10分の場所には高速鉄道の駅があり、北京と広州エリアを7-8時間で往来できるようになったと聞きます。視察時にはU12/U15の中国国内での全国大会が開催されており、選手だけでなく保護者などの家族が北京や上海、成都などから駆けつけていました。
選手たちは食堂や寝室、またトレーニングルームなどが完備されている「研修センター」で宿泊が可能で、さらに今年中には球場に隣接する形でホテルが、また室内練習場も完成するとのこと。



野球ソフトボール歴史館


中国国内の野球・ソフトボールに関する主要イベントは世代を問わず数多く開催されており、25年秋には4年に一度開催される「人民体育大会」が同球場で開催されるほか、3月には「中国プロ野球」も中山市で開催されることが最近発表になっています。

中国野球における一大拠点としての存在感は、育成年代にも数字として現れており、
地元少年野球チーム「中山熊猫(PANDA)」はU12の全国大会を23年までに5連覇、24年のU15アジア選手権に中国代表へこの地から4選手を輩出、地元の東昇高校が全国高校野球大会を3連覇を成し遂げ、25年夏に沖縄開催されるU18ワールドカップへ8人の選手がノミネートされています。
視察時に、馮小龍氏は将来的に日本の甲子園のように中山市で毎年高校野球を開催していきたいというプランを明かし、そうすれば甲子園大会のように100年かけて発展させていくことができると想いを語りました。


国内の一大拠点となった中山国際ベースボールタウンとして、今年の人民体育大会開催後にはプロ野球球団設立やウィンターリーグの開催などの構想があり、中国とアジアを繋ぐ展開にも期待が寄せられます。
視察後、弊社では中山国際ベースボールタウンと日本の野球を繋ぐ戦略プランを打ち立て、現地とオンラインで会話を続けています。構想を聞いた2016年から、ハード面がほぼ実現となっているいま、いよいよソフト面での展開が本格的にスタートします。

現地で聞いた話によると、野球自体はまだまだ中国全体の中では存在感を発揮できていないが、中国国内でも大谷翔平選手の名前は一般的にも知られているそうです。
また、北京には少年野球チームが500以上もあり、中山市ではスローピッチソフトボールの全国大会を毎年開催していますが、全国から1,000に近い数のチームが予選に参加するとのこと。
日本の高校野球(甲子園大会)を観ている人も、アニメを通じて野球に触れる人の数も多いそうです。
現在中国国内で人気を誇るバスケットボールは姚明(ヤオ・ミン)という1人のスター選手によって火がつきました。
もし、中山市(PANDA)から「中国版・大谷翔平」のような選手が輩出されれば、野球のプレゼンスも一気に向上する・・・そんなことを夢見てもいいのかもしれません。
今後の中山国際ベースボールタウンや中国野球、そして弊社の取り組みにご注目ください。